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キャリア教育のヒント第14回――根本 英明

求められる能動的学習法


 アクティブラーニング(以下、AL)が今、教育界で大きく注目されている。これまでのワンウェイの講義形式の授業に代わり、学習者がチームで主体的・対話的に学びを深める方法は、とりわけキャリア教育において、極めて効果的な学習法といえる。

 実はこうした能動的学習は、今生まれたものではなく、1970、80年代から高等教育で少しずつ取り組まれていた。産業界においては以前から組織開発の手法として実施されてきた。歴史を振り返ると、江戸時代末期の松下村塾などの私塾や薩摩の郷中教育でも近い取り組みがなされていた。

 ALが近年、注目されるに至ったきっかけは、平成24年8月の中央教育審議会の答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて」に始まり、平成26年、平成28年へと続く一連の答申にあるようだ。

 答申では、生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができないとして、従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する。こうした場を創り、学生が主体的に問題を発見し解答を見出していく能動的学習(AL)への転換の必要性を強調している。

 学校教育では、各教科等で何を教えるかという内容は重要だが、これまで以上に、その内容の学びを通じて「何ができるようになるか」を意識した指導が求められる。これを明確にしながら「どのように学ぶか」という学びの過程を組み立てていくことが求められる。それにはALの視点からの授業改善が必要である。

 高等学校教育においては、生徒が自分の夢や目標を持って主体的に学ぶことのできる環境を整備することの必要性を説いている。そのために育成すべき資質・能力の観点からその構造、目標や内容を見直すとともに、課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学習・指導方法であるALへの飛躍的充実を図ることが求められる。

 大学教育については、学生が高等学校までに培った力を更に発展・向上させるために、大学教育全体のカリキュラム・マネジメントを確立するとともに、主体性をもって多様な人々と協力して学ぶことのできるALへと質的に転換していくことが求められている。

 初等教育から高等教育に至るまで、AL型授業への移行が図られつつあるが、こうした授業がキャリア教育につながることは必然といえる。





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



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