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キャリア教育のヒント第13回――根本 英明

キャリア教育で最も効果的な

アクティブラーニング


 これまで5回にわたって、各専門学校のキャリア教育の取り組みを紹介したが、どの学校でもワークブック「未来ノート」を活用したアクティブラーニング型授業を展開している。

 VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代といわれる現在、固定的な知識の伝達だけでなく、変化に対応してさまざまな情報を取り込み、自分のものにしていくためには、主体的・対話的な深い学びが求められる。その意味でアクティブラーニングは、キャリア教育で最も効果の上がる学習方法ではないかと考えられる。

 そこで今回から数回にわたってアクティブラーニングについて探ってみたい。

 まず、アクティブラーニングの定義について、この研究の第一人者である京都大学の溝上慎一教授は「一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的)学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するなどの活動への関与と、そこで生じる認知的プロセスの外化を伴う」としている。

 外化とは、書く・話す・発表するなどの活動を通して、知識の理解や頭の中で思考したことなどを表現することである。

 中教審が2012年に出した答申の用語解説では「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、 教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブラーニングの方法である。」とある。

 現在のアクティブラーニングの概念は、1960年代のアメリカが発祥だという。当時、アメリカでは大学の大衆化が徐々に進み、意欲・学力に欠ける学生が増えてきた。そこで従来の伝統的な一方通行の講義形式ではなかなか教育効果が得られにくいとして、大学教育改革の一環として新たな教育法が模索される中で生まれてきた。

 これまでの教員主体の「教える」から学習者主体の「学ぶ」へと大きくパラダイム転換したのだ。その後、日本でも大学の大衆化に伴い、こうした動きが一部の大学で行われていたが、2012年3月の中教審大学分科会大学教育部会の「審議まとめ」と、それに続く8月の「答申」で大きく注目を集めるようになった。





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



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