TCE財団 ロゴ

 キャリア・サポートニュース

 
 

キャリア教育のヒント第10回――根本 英明

就活は小手先のテクニックより“気づき”が大切


 東放学園音響専門学校は、音響技術科と音響芸術科の2つの専攻があり、コンサートPAやレコーディングエンジニア、音楽プロデューサーなどをめざす学生が学んでいる。音響好きにとっては、好きでたまらない「趣味」が高じた学問だ。同校では、そのような学生に対して、社会に出て応用が利くように、選択科目で幅広い科目を設けているが、なかなか視野が広がらず、進路選択に生かせないことが課題だった。

 「やりたいことを職業に生かすと言っても、趣味と職業は違います。趣味は自分が楽しければいい。でも仕事は、相手がいてお客様の要望に応えていくもの。その切り替えが必要です」と進路指導担当主任の岡村朗さんは、こうした学生にくぎを刺し、できることを増やすように指導している。

 専門学校生は2年進級時に就活がスタートする。それにも関わらず、入学して1年経ったばかりでは学生の気持ちが追いつかない。

 こうした状況を解決する方策を探していた時、キャリア教育のワークブック「未来ノート」に出会い、腑に落ちた。

 一般的な就職指導は、書類の書き方や面接対策に終始しがちだ。しかし内面がしっかりしていないと、通り一遍のことしか書けず、面接に臨んでも腹から言葉が出てこない。

 そこで小手先のテクニックよりも、学生の気づきを促すキャリア教育を行うべきではないかと校長と相談した結果、導入が決まった。

 同校では2年間にわたり進路指導の授業を行っているが、1年前期に「就職講座Ⅰ」という科目でキャリア教育を実施することにした。今年も260冊以上の「未来ノート」を購入して授業を展開している。この授業は、特にグループワークにより、知らず知らずのうちに自己開示ができるので、クラスメートがお互いを理解することができる。また、働くという意義や目的、考え方を、ケーススタディによって学ぶことができる。

 今年は例年よりも進級率が改善した。キャリア教育は就職に結びつくほかに、副産物としてクラスメンバーが仲良くなる。その結果、退学者が減少したことが推測される。

 昨年、この授業を受けた学生は2年生になり、ただ今就職活動の真っ最中。スタートダッシュの速さで、どんどん内定が出ているそうだ。売り手市場であることを差し引いても、例年以上の内定率向上に、同校ではキャリア教育の効果が徐々に現れていることを実感している。





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



←前の記事へ   次の記事へ→
←「キャリア教育のヒント」の前の記事へ   「キャリア教育のヒント」の次の記事へ→

[キャリア・サポーター養成講座のページに戻る]