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キャリア教育のヒント第9回――根本 英明

未来ノートの活用で学生の反応も上々


 長崎リハビリテーション学院は昭和56年、九州で2番目の理学療法士の専門学校として設立された。現在、理学療法(一部、二部)、言語療法、作業療法の3学科を擁する。当時、理学療法学科長だった増本敏光先生は、4、5年前から心配していたことがあった。勉強のできる学生が臨床実習から戻って退学を申し出るという、以前では考えられなかった現象が起きていたことだ。

 そんな折、TCE財団主催の教員研修に参加し、「キャリア」という言葉に出会って目が開かれた。これまで学生に専門職になるための知識と技術を教えてきたが、学生自身の職業人生を含めたキャリアについて意識したことはなかった。

 研修から戻り、有志5、6名を集め、キャリアについて勉強会を始めた。若い先生もキャリア・サポーター養成講座や「未来ノート」活用研修会に参加し、学んだことを互いに発表し合った。回を重ねていく中で、キャリア教育についての知見を共有し深めていった。

 勉強会を始めて3年後の平成29年、ワークブック「未来ノート」を活用したキャリア教育を教員4名でスタートさせた。学院長も理解を示し、背中を押してくれた。退学者を減らすことはトップにとっても課題だったのだ。

 「未来ノート」はアクティブ・ラーニングによって、自分のキャリアのあり方を考えるチーム学習を中心としている。1クラスを教員2人体制で授業を進めることにして、授業前の準備だけでなく毎回の授業後に振り返りを行い、改善へ向けて意見を出し合って質を高めていった。

 昼間部は、1年生が「自己理解」、2年生は「仕事理解」を行う一方、職業体験者の多い夜間部では、1年目に「自己理解」と「仕事理解」の両方を学習した。

 ワークブック第4章の「模擬店を出そう」という実習を「病院をつくろう」にカスタマイズし、病院での理学療法士の役割を理解できるように工夫した。

 授業を通じて学生の反応は「自分を見つめ直すよい機会だった」「目標とする理学療法士像がはっきりしてきた」といった前向きなコメントのほか、「グループワークがとても楽しかった」といった感想が多くあった。「とくに夜間部は非常にいいクラスになりました」と増本先生は語る。

 理学療法学科で行われたキャリア教育は、4月から言語療法学科でもスタートした。さらに今、卒業後を見据え、ジョブカード導入も視野に入れている。同校の今後の取り組みが注目される。

 (TCE財団のホームページの「未来ノート研修」のコーナーには、別途に取材した導入校インタビューで、当学院の取り組みの詳細が記載されています。)

※導入校インタビュー記事はこちらから
 http://www.sgec.or.jp/scz_n/future_interview.html





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



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