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キャリア教育のヒント第3回――根本 英明

キャリア教育と職業教育


 キャリア教育に近い言葉として職業教育がある。この2つの違いは何だろうか。文部科学省では、職業教育が特定の職業に従事するために必要な知識や技能、能力、態度を育成するのに対し、キャリア教育は、一人ひとりの社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育としている。

 職業社会学者の梅澤正氏によれば、キャリア教育とは「働くことを通して『一人前の社会人』へと成長していく自分づくり」だという。梅澤氏は生き方と働き方がどれほど密接に関連しているかを学生に会得してもらうことが、キャリア教育にとって最も大事であると説く。つまり人間力を養うことだ。たしかに生き方なくして専門知識だけ学んでも砂上の楼閣かもしれない。

 文科省ではキャリア教育で育むべき「基礎的・汎用的能力」として、「人間関係形成・社会形成能力」「自己理解・自己管理能力」「課題対応能力」「キャリアプランニング能力」の4つの能力を示している。

 経済産業省では11年前に、職場や社会の中で多様な人々と共に仕事をしていくために必要な基礎的な力として「社会人基礎力」というコンセプトを打ち出した。これは「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの力と12の能力要素からなるものだ。

 文科省や経産省の示したこうした能力は、学生が社会に出て、職業人として生きていく上での基礎となり、新卒採用の場でも活用されている。

 職業教育とキャリア教育を車の両輪にたとえる人もいるが、この2つを比較した時、キャリア教育はむしろ職業教育の土台といえるのではないだろうか。いくら立派な建物を建てても、土台がしっかりしていないとその建物は崩れやすい。

 専門学校の目的は、専門課程での学びを通じて一人前の職業人を育成することにあると思う。スキルを身につける土台として、人間力を養うキャリア教育がある。

 では具体的にキャリア教育を進めていくためには、どうしたらよいだろうか。

 これはあくまで私見だが、一つは学生と接するすべての教職員が、就職相談だけでなく、人生の先輩として学生のキャリア支援に積極的に関わっていくようにすること。もう一つはキャリア教育のカリキュラムを正規の学習科目として位置付けることではないかと考える。





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



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