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キャリア教育のヒント第2回――根本 英明

キャリア教育の語源と変遷


 キャリアという言葉の語源はラテン語で、馬車などの乗り物の通り道(轍:わだち)から来ているそうだ。それから経歴、資格などの意味に転じていった。

 ちなみに轍で思いつくのが、高村光太郎の「道程」という詩だろう。

 「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」。キャリアという言葉は未来をイメージしがちだが、轍も高村光太郎の詩も、これまでたどった道を示している。人生を大きな一本の木にたとえると、枝が生えて葉が茂り豊かな実がなるためには、地中にしっかりと根を張っていなくてはならない。先のことだけでなく、まずは自分のこれまでたどってきた道のりを振り返り、自身の根っ子にあるのは何か、意識することが大切ではないかと思う。

 キャリア教育でいうキャリアには次のような定義がある。「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係付けや価値付けの累積」(文部科学省)、「働くことを通して築かれる生き様」(梅澤正)、「個人の生涯を通じて、仕事に関する経験や活動に関連した、個人に知覚された態度や行動の連鎖」(ダグラス・ホール)など、さまざまだ。

 日本でキャリアという考え方がはっきりと意識され始めたのは、90年代半ば以降。1995年、日経連が「新時代の『日本的経営』」という報告書を発表した。報告書では「長期蓄積能力活用型グループ」「高度専門能力活用型グループ」「雇用柔軟型グループ」の3種類の働き方を示し、これまでの終身雇用に替わる多様な働き方と雇用形態のあり方を提示した。4年後の99年には同じく日経連が「エンプロイヤビリティの確立をめざして〜『従業員自律・企業支援型』の人材育成を〜」と題した報告書を発表。企業内でのエンプロイヤビリティ形成の重要性と人事・人材育成のあり方を示した。

 こうした産業界の意識変化の影響もあって同年、中央教育審議会の答申ではじめて「キャリア教育」という言葉が登場した。その背景には上記に加え、高卒無業者の増加や七五三現象といわれる就職後3年以内の離職率の増加から、学校教育と職業生活との接続に問題があることが浮上してきたことがある。

 これを機に、生徒に望ましい職業観・勤労観を身に付けさせ、自己の個性を理解し、主体的に進路選択する能力・態度を育てる教育を実施する必要性が求められるようになった。





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



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