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キャリア教育のヒント第12回――根本 英明

美術系で大切なキャリアデザイン授業


 長野美術専門学校は、ビジュアルデザイン科、ビジュアルアート科、研究科を設置する長野で唯一の美術専門学校で、同校ではキャリアデザインが必須科目となっている。

 「本校の学生は絵を描くとか何かをつくることが好きで、作品で自分の内面を表現することが多い。他校に比べると内向的で言葉で表現することが苦手な学生が多いです」とキャリアデザインの授業を担当する塚田佳子さん(教務キャリア指導主事)は語る。

 いざ就職を考えると、どんな企業でも人との関わりは避けられない。自らのキャリアを築くためには、周りとコミュニケーションを取って主体的に仕事に取り組む姿勢を身に着ける必要があり、キャリアデザインの授業でもそれを意識している。

 別科目の講師だった塚田さんは7年前にキャリアの授業を前任者から引き継いで担当することになった。当初は前任者のカリキュラムを参考にしながら、手探り状態で授業を行っていた。数年経った時、学校長の勧めでTCE財団主催の「未来ノート」(当時は「やる気の根っこ」)活用研修会に参加し、自分を知ることが今後のより望ましいキャリア選択をするうえで大きな手掛かりになることを知った。「未来ノート」はさまざまなワークシートを使って自分についての考察を深めていける。そのため、1年前期はこれを授業で使い、自己理解を中心に行った。後期は、日本語の正しい使い方を身に着け、語彙力を増やすために日本語検定の取得をめざす。さらに2年次はビジネス能力検定の取得をめざすほか、ライティングスキルを学ぶ。

 自己理解のセッションではグループワークを通して「『そんな考え方をするんだ』『そういう経験をしてきたんだ』と自分の価値観がすべてでなく、色々な価値観を知り受け入れることで、人間関係の幅が広がり、人としての成長にもつながっています」(塚田さん)

 高校卒業後すぐの授業なので、積極的にグループワークに取り組める学生もいれば、グループの中でなかなか話せない学生もいる。しかしそんな時は急かさず、温かく見守ることで、回を重ねるうちに徐々に慣れて話せるようになるという。

 同校の就職率はここ数年90%以上。うち7割の学生がデザイン関連や映像関係、広告代理店といった分野にデザイナー、カメラマン、企画職などの専門職として就職する。キャリア教育の成果は着々とあがっているようだ。





根本 英明(ねもと・えいめい)

日本能率協会で月刊誌「人材教育」編集長等を経て独立。大学・専門学校でのキャリア教育の推進に携わっている。自在(株)代表取締役、TCE財団キャリア・サポート事業運営委員会委員、キャリアコンサルタント。



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